トランプ大統領が米国によってホルムズ海峡を封鎖するとの発言があり、実際そのような状況になっているようです。では、どのような目的で、どのような対応をしているのか調べてみました。
米国によるホルムズ海峡封鎖?
厳密にいうと、足元で確認できるのは「米国が4月13日にイランの港湾・沿岸水域に対する海上封鎖を始め、その対抗措置としてイランがホルムズ海峡の通航制限を再び強めた」という構図です。APによると米軍はイランの港や沿岸水域を出入りする船を対象に海上封鎖を実施し、「イランへの海上経済取引を完全に止めた」と説明しています。Reutersも、4月18日にイラン海軍が「海峡を再び閉鎖した」と無線で通告し、船舶が通航を拒否されたと報じています。したがって、米国が海峡そのものを全世界向けに全面封鎖したというより、イラン向け海上貿易を止めた結果としてホルムズの機能が麻痺し、イランが追加的に通航制限をかけたと理解するのが近いです。
イランに取って輸出面でどのような影響があるの?
この状況がイランに最も痛いのは、まず輸出収入の急減です。イランの輸出は石油・石油製品・LPG・尿素・メタノールなどエネルギー・化学品への依存が大きく、WITSでは2024年の上位輸出品の筆頭が原油系、次いで石油製品、液化プロパン、尿素、メタノールとなっています。さらにReutersによれば、中国はイラン最大の貿易相手国で、2025年には中国がイランの海上輸送原油の8割超を買っていたとされています。つまり海上封鎖で止まるのは、イランの「外貨を稼ぐ本丸」です。しかもReutersは4月16日に、イランが国内供給確保のため石油化学製品の輸出も停止したと報じており、非原油の外貨獲得源まで同時に細っています。
「ホルムズ海峡を使えなくても別ルートがあるのでは」と思われがちですが、代替余地はかなり限られます。EIAによると、ホルムズ海峡は2024年と2025年1Qで世界の海上石油貿易の4分の1超、世界の石油・石油製品消費の約5分の1に相当する量が通過する要衝で、地域の多くの輸送は十分な代替手段を持ちません。イラン自身もゴーレ・ジャスク・パイプラインとジャスク積出基地という「ホルムズ回避」ルートを持っていますが、EIAは実効能力を約30万バレル/日とみており、2024年夏の輸出は7万バレル/日未満、その後9月以降は積み出しが止まったとしています。しかも今回の米封鎖は「海峡内」だけでなくイラン港湾・沿岸水域から出る船そのものを対象にしているため、仮にジャスク経由でも、海上に出た時点で封鎖の影響を受けやすいです。
輸入は?
次に輸入面ですが、打撃は「ぜいたく品が届かない」程度では済みません。WITSでは2024年の上位輸入品にトウモロコシ、小麦、コメ、大豆が並び、輸入の大きな塊として中間財18.4十億ドル、資本財14.6十億ドルが計上されています。輸入相手としてはUAEが最大、次いで中国、トルコ、インド、ドイツです。つまり止まるのは食料だけでなく、工場を回す部材、通信・機械設備、産業用の投入財です。世界銀行も、UAEやオマーンとの取引が恒久的に細れば、生活必需品と産業用投入財の不足が悪化すると警告しています。
そのため、イラン国内では「輸出が減る → ドルが入らない → 輸入が減る → 物が不足する」という悪循環が起きやすくなります。単なる輸入ショックなら内需縮小で終わることもありますが、イランの場合は同時に輸出も止まり、外貨獲得源そのものが細るため、ショックはより深くなります。世界銀行は2025/26年度の輸出を前年比-5.3%、輸入を-14.8%と見込み、経常収支もGDP比2.8%から0.2%へ急低下するとしています。これは、外貨を稼ぐ力と、外貨で物を買う力の両方が一気に弱るということです。
イランの通貨はどうなる?
通貨面では、もともと弱っていたリアル安がさらに進みやすいです。Reutersは1月末時点で、イランのリアルが自由市場で1ドル=150万リアルの記録的安値をつけたと報じています。さらに世界銀行は、輸出縮小と外貨準備へのアクセス制約が重なり、2026年3月初めに通貨が前年比44%下落したとし、補助為替レートの縮小も重なって**2026年2月のインフレ率は62.2%、食料インフレは99%**に達したとしています。海上封鎖はこの「ドル不足」をさらに悪化させるので、輸入業者はより高いレートでドルを確保せざるを得ず、その分だけ国内価格に転嫁されやすくなります。
国内経済全体で見ると、これはスタグフレーション型の悪化です。世界銀行は2025/26年度の実質GDPを-2.7%と見込み、非石油部門も、インフラ損傷、水・電力不足、投資マインド悪化、さらに国際輸送・保険サービスの確保難で抑え込まれるとしています。つまり、景気は悪くなるのに物価は下がりにくく、むしろ上がりやすい構造です。企業は原材料や部品が届かず減産、家計は食料・日用品・燃料の値上がりで実質所得が削られ、失業や生活困窮が広がりやすくなります。世界銀行は貧困の増加も明示しています。
財政にもかなり重いです。輸出が細れば石油収入が減り、景気悪化で税収も弱ります。一方で、政府は食料補助や生活支援、復旧費用を増やさざるを得ません。世界銀行は、低い石油収入と弱い課税基盤、高い社会支出が同時に進み、財政赤字は国内債発行、政府系基金の取り崩し、マネタイゼーション(実質的な通貨発行による穴埋め)で賄われる可能性が高いとみています。これは短期的には資金繰りになりますが、長い目ではさらにインフレ圧力を強めます。
要するに、米国の海上封鎖とホルムズ海峡の混乱がイランにもたらすのは、輸入難だけではありません。
本質は「外貨を稼ぐ輸出の停止」と「外貨が足りない中での輸入不足」が同時に起きることです。結果として、
1) 石油・石化輸出が止まり、
2) ドル不足で通貨が下がり、
3) 食料・部材・設備の輸入が詰まり、
4) 物価高と景気後退が同時進行し、
5) 財政悪化と生活困窮が深まる、
という形でイラン経済全体を圧迫します。外から見ると「海峡の問題」に見えますが、イラン国内では為替・物価・雇用・財政を一気に悪化させる総合的な経済危機として表れます。
トランプ大統領の狙い
トランプさんの真の狙いはイランの国力の低下だったということですね。国力が低下すると国民の不満が現政権に対して高まり、内乱が起きやすくなります。政府にとって外的はある意味対応しやすいですが、足元が揺らぐ内部の敵は、対応が非常に難しいので相当困ると思います。こうなると米国とイランの調停は近いうちに妥結しそうですね。
※あくまでも上記は私の見解です。この後の動向は継続的にチェックが必要ですね。
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