ホルムズ海峡

雑記

最近ニュースでホルムズ海峡について良く出てきます。石油タンカーが通るために重要な海路とは理解していますが、いい機会なので詳しく調べてみました。

ホルムズ海峡とは

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ非常に狭い海上交通の要衝で、サウジアラビア、イラク、UAE、クウェート、カタール、イランなど湾岸産油・産ガス国の輸出の大動脈です。米エネルギー情報局(EIA)によると、2024年から2025年1Qにかけて、ホルムズ海峡を通過した石油・石油製品は世界の海上石油取引の4分の1超、世界の石油・石油製品消費の約5分の1 を占め、さらに 世界のLNG取引の約2割 も通過しました。つまりホルムズ海峡は、単なる「中東の海峡」ではなく、世界のエネルギー価格そのものを左右するグローバルなボトルネックです。

この海峡が特別に重要なのは、代替ルートが限られているからです。EIAによれば、サウジとUAEには一部の迂回パイプラインがありますが、海峡閉塞時に完全代替できる余力は 約260万バレル/日程度 にとどまります。対してホルムズ経由の流量はその何倍もあるため、完全に止まれば、輸出量のかなりの部分が行き場を失います。しかも問題は物理的な通行不能だけではありません。軍事衝突が起きると、保険料、船賃、警備コスト、寄港判断が一斉に悪化し、実際に封鎖されなくても「流れにくい海峡」になるだけで価格が跳ねます。つまりホルムズ海峡のリスクは、供給量の問題と物流コストの問題が同時に起きる点にあります。

日本にとってどのぐらい重要?

では、日本にとってなぜ特に重要か。結論から言えば、日本は主要先進国の中でもとりわけホルムズ海峡への依存が大きい国です。Reutersによると、日本は 石油の約95%を中東に依存 しており、しかも その約70%がホルムズ海峡経由 です。LNGも中東依存は石油ほど高くないものの、総輸入の11%が中東由来、約6%がホルムズ海峡経由 とされています。日本のエネルギー自給率は経済産業省の2023年度改訂報告で 15.3% に過ぎません。つまり日本は、国内で使うエネルギーの大半を海外から調達しており、その中でも特に石油は中東・ホルムズ依存が極めて高い構造です。だからホルムズ海峡の緊張は、日本では単なる「国際ニュース」ではなく、発電コスト、ガソリン価格、物流費、化学原料費、電気料金へ直結する安全保障問題になります。

日本にとって厳しいのは、石油が輸送だけでなく、産業全体のコスト基盤に入り込んでいる点です。発電そのものは再エネ、原子力、LNG、石炭などで分散されていますが、石油価格が上がると、輸送・素材・肥料・包装・食品・航空・漁業まで波及します。円安が重なると、その負担はさらに増幅されます。日本は備蓄で短期ショックには比較的強く、Reutersによると 国家備蓄146日分を含め、合計254日分の石油備蓄 を持っています。しかし、これは「時間を稼ぐ装置」であって、ホルムズ不安が長引いた場合の根本解決ではありません。日本にとっての本質は、自給率の低さと調達先の地理的偏り にあります。

欧州は?

次に欧州です。欧州は日本ほど直接的にホルムズ依存しているわけではありませんが、やはり重要です。Eurostatによると、EUの 2023年のエネルギー輸入依存度は58.4% で、域内需要の過半を純輸入に頼っています。EUのエネルギー構成でも 石油・石油製品が37.6%、天然ガスが20.4% を占めており、依然として化石燃料の比重は大きいです。加えて欧州委員会によると、EUのGCC(湾岸協力会議)からの2024年輸入は 623億ユーロ、そのうち 75.4%が燃料・鉱物製品 でした。つまり欧州はロシア依存を下げた後も、湾岸とのエネルギー関係を維持しており、ホルムズ海峡が不安定になると、原油だけでなくLNG調達や産業用エネルギー価格に影響を受けます。

とくに欧州にとって重要なのは カタール産LNG です。ホルムズ海峡を通るLNGのほぼすべてはカタールとUAEから出ており、EIAは 2024年に世界LNG取引の約20%がホルムズ海峡を通過 したとしています。ロシア産ガスの代替調達を進めてきた欧州にとって、LNG市場の混乱は直接打撃です。たとえ欧州向けの実物が全量止まらなくても、アジアが代替調達でスポット市場に殺到すれば、欧州も高値での調達を迫られます。つまり欧州にとってのホルムズ海峡リスクは、日本のような「直輸入停止リスク」に加え、グローバルLNG価格上昇リスク として非常に大きいのです。

米国は?

一方で米国は、日欧ほど直接依存していません。EIAによると、米国は 2019年以降、総エネルギーで純輸出国 であり、2024年はエネルギー輸出が輸入を 9.26クアッド 上回りました。また 2024年の国内エネルギー供給に占める輸入の割合は17% まで低下し、約40年ぶりの低水準です。さらに、ホルムズ海峡経由で米国が2024年に輸入したペルシャ湾産の原油・コンデンセートは 約50万バレル/日 で、米国の原油輸入全体の7%、石油液体燃料消費の2% にすぎません。数字だけ見れば、米国はホルムズ海峡に対してかなり強くなっています。

しかし、ここで誤解してはいけないのは、米国は「無関係」ではない ということです。原油価格は世界市場で決まるため、米国が中東からあまり輸入していなくても、ホルムズ海峡が混乱すれば国際原油価格は上がり、米国内のガソリン価格、航空燃料、インフレ期待、金融市場に影響します。加えて米国は世界最大級の産油国・輸出国でもあるため、価格変動は外交、安全保障、同盟国支援、海軍展開、インフレ対策と結びつきます。つまり米国にとってホルムズ海峡の重要性は、「自分が困る輸入路」というより、世界経済と同盟国の安定を左右する海上チョークポイント としての重要性です。

まとめると・・・

整理すると、ホルムズ海峡の重要性は各地域で少し意味が違います。日本にとっては、低い自給率と高い中東依存ゆえの「生命線」です。欧州にとっては、依然高い輸入依存のもとで、原油・LNG価格を揺らす「コストと供給の不安定要因」です。米国にとっては、自国の直接輸入路というより、世界市場と同盟国、日本・韓国・欧州の安定を守るための「国際秩序上の要衝」です。EIAは、ホルムズ海峡を通る原油・コンデンセートの84%、LNGの83%がアジア向け と推計しており、特に中国、インド、日本、韓国が大きな影響を受けるとしています。つまり、ホルムズ危機の最大の実需被害者はアジア、最大の市場ショックは世界全体、そして最大の安全保障プレーヤーは米国、という構図です。

結局のところ、ホルムズ海峡の問題は単なる地政学ではありません。各国のエネルギー自給率の差が、そのまま危機耐性の差になります。日本は自給率15.3%で脆弱、EUは輸入依存58.4%でなお脆弱、米国は純輸出国化で相対的に強い。それでも、世界の石油とLNGの約2割が通る海峡が揺らげば、誰も無傷ではいられません。ホルムズ海峡は、エネルギー安全保障・物価・外交・軍事が一点に集中する、現代世界でもっとも重要な海上ボトルネックの一つです。

宜しければ応援クリックお願いたします!

サラリーマン投資家ランキング

にほんブログ村 投資ブログ 個人投資家へ

コメント