米最高裁が「トランプ関税は違法」と判決

雑記

米最高裁は、「トランプ関税は違法」と判断を下しました。それに対してトランプ大統領は「判決は遺憾だ!それなら違う手段をとる!」と言ってます。。また昨年4月のような大混乱及び株価急落が来るのでしょうか??取り急ぎ状況を調べてみました。

何が違法と判断されたのか(判決の中身)

米最高裁は 2026年2月20日、統合審理した事件(Learning Resources v. Trump / Trump v. V.O.S. Selections)で、IEEPA は大統領に関税を課す権限を与えていないと判断しました。判決要旨(Syllabus)にもそのまま明記されています。

最高裁の多数意見(ロバーツ長官)は、要旨として以下を述べています。

  • IEEPAの文言(「regulate … importation」)は、関税・関税徴収(taxation/duties)を明示していない
  • 「regulate」という語を、関税のような課税権限まで含むと読むのは広すぎる
  • これまで大統領がIEEPAを使って今回のように関税を課してこなかった点も重視
  • よって、IEEPAに基づく今回の広範な関税は権限逸脱(ultra vires)という結論。

また、判決要旨では下級審が問題にした関税を 「範囲・金額・期間が無限定(unbounded in scope, amount, and duration)」 と整理しており、最高裁も最終的に IEEPA 根拠を否定しました。

判決の射程(重要)

この判決で止まるのは、主に IEEPAベースの関税 です。
Reuters報道でも、米税関当局(CBP)は停止対象を IEEPA関連の関税コードに限定し、通商拡大法232条(国家安全保障)や通商法301条(不公正貿易慣行)に基づく関税は対象外 としています。

つまり、実務上は次の理解が正確です。

  • 違法となったもの:IEEPA根拠の相互関税・緊急関税(今回争われたもの)
  • 引き続き残るもの:232条・301条など他法令ベースの関税(少なくとも現時点)

直近の米国政府の対応(すでに動いている)

1) 税関(CBP)はIEEPA関税の徴収停止

CBPは、最高裁判決を受けて IEEPAに基づく関税の徴収停止 と関連コードの無効化を案内しました。

2) ただし政権は「別の法的根拠」で関税を維持・再構成する姿勢

Reuters(日本語版)では、政権が 通商法122条を根拠に暫定10%関税(最長150日、法文上は最大15%) を導入し、同時に 301条/232条ルートで引き上げや再構成を進める考えを示しています。

さらにReuters英語版では、CBPの徴収停止は 新たな15%のグローバル関税(別の法的権限)導入と同時期 と報じられており、政策実態としては「IEEPAが消えても関税政策そのものは継続」が基本線です。

今後の争点(米国として何が起きるか)

A. 還付(refund)問題が最大の実務争点

Reutersは、IEEPA関税で徴収された税収のうち 1,750億ドル超が返還請求の対象になり得る と報じています(Penn Wharton推計)。

ただし、最高裁は還付の具体的運用まで示しておらず、国際貿易裁判所(CIT)等で手続き・範囲が争われる可能性 が高いです。Reutersも、企業の返還請求ラッシュが見込まれる一方で、処理は長期化し得ると伝えています。

B. 政府は法的根拠を「差し替え」て関税を再設計

122条(短期・暫定)→ 301条/232条(調査・手続き付き)という流れで、政権は関税水準を戻す/再構築する意向を示しています。Reuters日本語版でも、USTRに調査指示を出したことが報じられています。

C. 通商交渉の不確実性はむしろ継続

EU側が「既存合意の履行」を求めるなど、各国は判決後も米国の次の法的手段を見極めている段階です。政策が消えたというより、法的器(statutory vehicle)が変わるだけ という見方が強いです。


企業の対応(米国企業・輸入企業・日本企業の実務)

ここはかなり重要です。判決後の実務は「勝った/負けた」より 回収・再課税・契約調整 の勝負になります。

1) まずやるべきこと(輸入企業)

  • IEEPA関税で支払った金額の棚卸し(品目、国、期間、Entry単位)
  • 通関記録・税関コード・支払証憑の保全
  • どの税が IEEPA由来 で、どれが 232/301由来 かを分ける(ここを混ぜると還付請求が崩れます)

2) 還付請求の準備

  • 返還が自動かどうかは未確定で、CBPも追加ガイダンス待ちの状態です。
  • そのため企業側は、税関ブローカー・通商弁護士・社内税務/経理 を連携させて、請求可能性と時効/手続期限を管理する必要があります(具体期限は今後の裁判所・CBP案内次第)。

3) 価格・契約の見直し

判決で一時的に税負担が下がる可能性があっても、政権は別法令で再課税を進める姿勢です。
そのため、

  • 短期価格改定を急ぎすぎない
  • 契約書の 関税転嫁条項(tariff pass-through)、価格調整条項、再交渉条項を再確認
  • 在庫積み増し/前倒し輸入の判断は、122条の150日枠や301調査の進捗を見ながら行う
    のが現実的です。

4) 調達・サプライチェーンの分散を続ける

今回の判決は「関税政策の終わり」ではありません。
むしろ 法的根拠の入れ替えで政策継続 が示唆されているので、企業は引き続き

  • 代替調達先
  • 原産地戦略
  • 米国内最終組立の可否
  • 通商コンプライアンス(原産地・分類・評価)
    を進める必要があります。

5) 上場企業・大企業の開示対応

  • 決算説明で 関税コスト見通しを「解除」前提で語らない
  • 「還付見込み」は、回収確度が高くなるまで利益計上を慎重に(会計・監査観点)
  • シナリオ別(IEEPA消滅/122条継続/301再強化)の感応度開示が有効

日本企業への影響(実務目線)

日本企業にとっては、対米輸出の現場で次の3点が焦点です。

  • 短期:IEEPA由来分の停止・還付可能性(ただし実務は不透明)
  • 中期:122条の暫定関税、さらに301/232ルートへの置き換え可能性
  • 長期:米政権の関税政策自体は続く前提で、国別・品目別に法的根拠が分散する複雑化

つまり、「関税がなくなる」ではなく「関税法務・通関実務がさらに複雑になる」 と見たほうが実態に近いです。


まとめ

  • 最高裁は IEEPAに基づく広範関税を違法 と判断(6-3)。
  • ただし 232条・301条など他の関税は残る
  • 米政府はすでに 別法令(122条など)で代替関税 を進める動き。
  • 企業の実務は、還付請求準備・証憑管理・契約見直し・サプライチェーン再設計 が中心。

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